「ぱにぽにだっしゅ!」感想と考察

ぱにぽにだっしゅ!」ついに全話見ました。
少しだけ感想と考察を述べさせていただきます。

  • 全体的な感想

一言で言えば、スナック菓子のようなアニメでした。栄養なんてほとんど無いんだけれど、もう一度見だしたら止まらない。瞬間的な快感を求めて何話でも見てしまうという。これはひとえに、シュールなギャグ異常な量のパロディ、そして無意味だけど強烈な萌えのせいだと思います。

  • 「意味」でなく「強度」に支えられた作品

詳しくは拙稿ぱにぽにだっしゅ!とネギま!を読んでいただきたいのですが、もう一度触れておきます。この作品、結局最後まで見たところで、ストーリーあるいは登場人物の成長なんて描写は皆無でした。(それどころか、その他の「意味」ある作品からのパロディを多用し、「意味」を相対化していた。)

  • 膨大な量の黒板の書き込み

「強度」の象徴としては、背後の黒板に書き込まれた膨大な量のネタがまず挙げられるだろう。極めて希薄ではあるが、かろうじて本作にも存在している「意味」「ストーリー」に全く関係の無い多量のマニアックなネタ。よくよく考えてみれば、黒板は真っ白(真っ黒?)の状態であっても本作の「ストーリー」はなにも変わらない。しかし、この書き込みによって情報量だけは上乗せされる。僕はあの黒板を見て、モナリザに髭を書いたマルセル・デュシャンを思い出した。(髭を書かれたモナリザは、芸術的かどうかは置いといて、情報量だけは元のモナリザを上回っている。)

  • 無意味だけど強烈な「萌え」

もう一つ、「強度」の象徴について。「萌え」を狙った作品というのは、どうしても「物語」が付属物になってしまうが、ぱにぽにだっしゅ!」においてはその付属物としての「物語」さえもほぼ全廃してしまっている。しかし、一般的に「萌え」は付属物とは言え「物語」によって担保されている面があり、いくら記号的・形式的ではあっても人は「物語」あるいは「意味」を背負わないキャラにはなかなか萌えにくい。しかし「ぱにぽにだっしゅ!」はハイクオリティな作画声優の演技でその課題を難なく乗り越えてしまっている。「キャラ立ち」も「ストーリー」に頼らず、図像口癖により担保されている。結果、他作品では体感できないような、瞬間的であり強烈な「萌え」がこの作品では体感できる。

  • やめられない、とまらない

さて、「意味」でなく「強度」で支えられたこの作品、一度中毒になるとなかなか止められません。(また一話から見直してます。)しかし、「意味」はほとんど無いわけですから、見ることで感動や教訓を得られたりするわけではなく、ただもう瞬間的な快感があるだけ。極めてポストモダンな作品だと思いました。