色川武大「うらおもて人生録」 感想その1

うらおもて人生録 (新潮文庫)

うらおもて人生録 (新潮文庫)

半分ほど読みました。(まあ、どうしても赤松健がこの本をどう読んでるのかとか、赤松作品にどういう影響を与えているのか、なんてうがった読み方をしてしまうわけなのですが。)


印象的だったのはプロ論の話とか、実力と運の話ですね。赤松先生は自身について「芸術家というよりも職人」という認識をなさっているようなのですが、そういう認識と通じる部分が色川さんのお話からも感じられます。


色川さんによると、プロというのは持続を旨とし、実力は常に一定水準に保ちつつも、運も効果的に使っていかなければならない。そして9勝6敗を維持していく。アマチュアは、実力ではなく一時の強運を頼りにして、自然にまかせて勝とうとする。よって14勝1敗のこともあれば、1勝14敗になることもある。「天才ではなく秀才」「芸術家ではなく職人」タイプである赤松先生は色川さん言うところの9勝6敗の「プロ」タイプだなあと思いました。(まあ恐ろしいことに天才アマチュアタイプの人の中にはずぅ〜っと14勝1敗で勝ちまくる人もいるわけなのですがね。)


で、余談ですがネギま!という作品を考えたときに、これは作品自体が持続を旨として作られているわけで、赤松先生の才能(というか努力というか)が発揮されやすい作品なのかもしれないなあなどと思ったり。(あと、たしかどこかで「ラブひな的要素も半分ほど残した」っておっしゃってましたけど、それも持続を狙ってのことでしょうね。人気連載の後に、全く新しいことをはじめてコケる漫画家さんは数多いですから。)


えー、話がそれましたが、この本自体はこんな読み方しなくても十分おもしろいです。ただ僕に関して言えば、数年前だったら「胡散臭いエッセイ本」だと決めつけて終わっていたかもしれません。それなりに人生経験を積んだ上で読んでるから、この本の訴えかける力を感じ取れているような気がいたします。


参考:赤松健論‐赤松健発言集1:「大衆娯楽」