機動新世紀ガンダムX 〜#20

半分見終えたので軽く感想を。

当作品、「ガンダムを考えるガンダム」というキーワードが示すように、トミノガンダムを相対化しようという試みが果敢になされていると感じました。例えば、トミノガンダムが「戦争」を描いているのに対し、この作品は「戦後」を扱っています。戦争中、ニュータイプとして戦ったジャミルは、従来のガンダムシリーズならば主人公となるべき人物ですが、ガンダムXの舞台はその戦争後です。彼は多くの命を奪った過去の自分や戦争を憎み、そのためなんとニュータイプ能力を失い、さらにはコックピット恐怖症におちいった状態で登場します。また、他のガンダムが「悲惨な戦争の中を生き抜くこと」を描いているのだとすれば、ガンダムXは「その戦争後を生きる人々の懸命さ」を描いていると言って良いでしょう。そういう意味で、当作品は前向きなエネルギーに満ち溢れており、ガンダム作品としてはたしかに異端だと思います。(Zガンダムを信奉している方などは見るのが苦痛なのではないでしょうか…。)

  • ボーイ・ミーツ・ガール

さて「戦後」を舞台にした当作品、主人公のガロード・ランも前向きで一途です。彼は偶然出会ったヒロインであるティファ・アディールを守るために戦います。この2人、物語の最初からすでに仲が良く、見ていてほほえましい気持ちになれます。ガンダムシリーズで、こういった「少年の初々しい恋心」を主軸に据えた作品は他に無いのではないでしょうか。二人のお互いを思うまっすぐな気持ちに心打たれます。

当作品では大きな戦争が終わっているので、モビルスーツは戦争兵器ではなく、金稼ぎの道具として認識されています。ガロードたちの乗る旗艦「フリーデン」も、お宝を探して旅しており(本当はもう一つ目的があるのですが)、パイロットも臨時に雇っているだけ。だから気に食わない用件だとパイロットが仕事を降りちゃったりします。これも従来のガンダムの厳しい軍隊の規律などとは程遠い描写です。しかし彼らは他の人物たちと交流を深めていくうちに、そういった強制なしで、自主的にフリーデンを居場所にしていきます。そのあたりの描写も非常に丁寧ですね。

  • 少年の冒険活劇として

結局のところ、難しいことは考えなくても、前向きな少年の冒険活劇として十分鑑賞に堪えうる作品です。近年の作品では「エウレカセブン」なんかに近い印象ですね。不思議な能力のある少女を守ろうとする男の子の物語。

  • 残念な点

当作品を見ていて残念なのは、「地味」だと言われるように、良さが一見してわかりにくいところだと思います。(例えば、二次創作に堪えうるほどのキャラ立ちがない、ロボットの外見や武装の地味さなど。その上「打ち切り作品」というマイナスイメージが付きまとっています。)しかし、丁寧な作りなのは間違いありません。OPの演出やかっこよさ、BGMの質の高さ、奇抜な次回予告。何より登場人物たちがストーリーを追うごとに成長していくことを如実に感じることができます。(毎話、見てよかったと思えます。)いわれのない偏見で大きな損をしている作品だと思いました。