「半分の月がのぼる空5」

本当にいい話ですね。


ライトノベルにありがちなファンタジックな設定は全く無く、
よくもここまでやってくれましたという感じ。
登場人物みんなが物語の中で生きています。


では、今回も少しだけ引用を…。

あるいは、僕が口にしているのは、どうでもいい言葉なのかもしれなかった。ただの自己満足みたいなものなのかもしれない。けれど僕が手にしている武器はそれだけだった。たとえ刃こぼれしていようが、折れていようが、僕は僕の武器で戦うしかなかった。あるいは夏目なら、もっとちゃんとしたことを言えるのかもしれない。亜希子さんの言葉になら、説得力があるのかもしれない。彼らは大人で、僕よりも長い時間を生き、僕よりもたくさんの経験を積んでいた。嫌な目にだって、いっぱいあってきたはずだ。彼らの言葉にあるような重みなんて、だから僕の言葉にはなかった。けれど僕は僕を頼りにするしかなかった。そうさ、人を頼るわけにはいかないんだ。どんなにダサくても、カッコ悪くても、みっともなくても、自分でやるしかない。

「半分の月がのぼる空6」

あまりにも話の続きが気になって、徹夜で読破。


前巻でお話は完結しているので、
「その後の日常」を描いた後日談的内容。


感想というか、感じたことを少し。


高校の先生がよく言ってた言葉で、
「生きるということは、可能性を捨てるということだ」
というものがありましたが、
この作品のテーマはまさにそれだと思いました。


例として、主人公・裕一の言葉を引用します。

たったひとつのもの。世界で一番大事な存在。僕はそれを手に入れた幸福とともに、いくつかのことを投げ捨てることにした。

ここで、この町で、僕たちは生きていく。だって、僕は自らの手で、未来を、大切なものを、ちゃんと選んだのだ。たったひとりの女の子と、自らの夢を天秤にかけたら、かたんと女の子のほうに傾いた。それはもう、あっさりと傾いた。

主人公に限らず、登場人物たちはみな、
「可能性」を捨て、「未来」を選びとっていきます。
時にはその「もう一つの可能性」のことを思い、
嫉妬したり、羨ましがったりするのですが、
自分が選んだ「未来」を、「まあ悪くない」と言いながら、
気負いせず、しかし、しっかりと生きていきます。


私も、さまざまな夢や理想をどんどん捨てて、これまで生きてきました。
本当に、「これだけは譲れない」と思っていたものも、たくさん捨てました。
それでも、今、心はすごく穏やかな状態でいて、満たされています。


欲望というものは止まるところを知りませんし、
嫉妬・羨望といったマイナスの感情に捉われることも多々ありますが、
それでも、生きることは「まあ悪くない」ものだと今の私は感じています。


ああ、なんか話がそれましたね。
ただの単なるラブストーリーでは無いと思います。オススメ。